錆びれたトタンの波板が好きな人は、結構多いかもしれない。
田舎道を走る時はついつい脇見しがち。
先日も筑豊あたりを走っていたら目に飛び込んできたパッチワーク。
思わずブレーキを踏みシャッターを切った。
工場や納屋だけに使うのはもったいのでは?
それにしても暑い夏。
「木場のむすび」のコンセプト編に続いて、
加工直売所を味気のある雰囲気にしていく、お店づくりに取り組みについて。
お話を頂いた時には、既に建物はできてしまっていたので、何を足して効果的に店舗の演出をしていくかを検討。
木場のむすびという場が、お母さん達がおむすびを握って賑わいが生まれるイメージを強く持って、
サイン計画、パッケージ、空間、ユニフォームとデザインを考えていきました。
お店づくりがうまく進んだのは、木場みのりの会の皆さんのDIYのスキルが非常に高かったことにあります。
大工仕事から、土木工事と手を動かす作業を手際よくこなされ、
デザインイメージを口頭で伝えて帰ると、次にはこちらの意図を組まれてちゃんと形になっていて、
何度も驚かされました。お百姓さんとはこうあるものなんだなぁと。
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広域農道で交通量が多い立地で道路沿いではあるものの、
入口がその農道に面してなく、迂回して店舗に入らないといけません。
しかも、道より低い場所に店舗があるので、見過ごしてしまう可能性もありました。
そこで、たくさん幟を作成し、道や店舗周りに立て、暖簾を店舗の軒にかけることで、
ドライバーの視界に飛び込むようにしました。
また、店内にも加工所と店舗を隔てる壁には、大きな窓が2面あります。
目隠しと、お店の演出を兼ねて、ここにも暖簾を。
その他、窓ガラスには何の入口か印すために、カッティングシートで案内をしています。
カッティングシートの制作と施工は、KifuLの木本店長によるもの。
また、地元の方からいただいた立派な木の板を、看板にしたいという希望があったので、
ロゴマークではなく「御結」と揮毫して、入口に設置。
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お米が主役の加工直売所なので、米袋のパッケージをオープンに間に合わせました。
デザインに当たって、以下のようなことを考慮しました。
1.木場みのりの会の生産者の方々が複数利用されるもの。
2.1kgから10kgまでサイズバリエーションがある。
3.棚田という手間のかかる場所で作られていること。
4.ほかの道の駅などにも出店されていること。
5.パッケージの印刷費のイニシャルコストを抑えること。
この条件を踏まえて、サイズ展開に合わせて3種類のラベルと、ゴム印を利用すること、
そして、販売価格を上げるご提案しました。
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お店では、各種おむすびに、ちまきや押し寿司と米三昧。
合わせてお惣菜も購入できます。
食のアドバイザーで入られているQ’s worskの小野さんが、
商品のブラッシュアップをされて、包材のご提案も。
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店舗でのユニフォームは、お母さんたちのおむすびを結ぶ姿が美しく見えることを第一に考え、
最初は割烹着やシャツなどを考えたものの、働く環境や機能性とランニングコストに配慮して、
ポロシャツとエプロンに手ぬぐいをモノトーンで揃えました。
そして、木場のむすびのスタッフだと一目でわかるように、シルクスクリーンでロゴを印刷。
費用面のことを考えて、これも製版キットを使って自分たちでDIYすることに。
この方が、今後ユニフォームが追加で必要になった時も、簡単に作れます。
嬉しいことに、ポロシャツを買いたいという声も聞こえています。
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店舗空間ディレクションで大切にしたこと、分かりやすい合言葉として、「峠の茶屋」と言っていましたが、
もっとイメージが簡単で、空間づくりを皆さんで今後維持できるように、
「簡素」であること、そしてお百姓さんの納屋にいるような佇まいであることを伝えていきました。
つまり、他の要素で飾ったりすることをしないというルールでもあります。
また、味気ある空間をいかに演出するかをコスト面も含め考え、
ペイントと和紙を使った演出を軸に行いました。
ここで力を借りたのは、KifuLの木本店長と、紙漉思考室の前田夫妻です。
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塗料は、嫌な匂いが全くなく、マットで色に奥行きがあり、光の具合で変化するF&Bを選び、
ペイントサポートをお願いしました。カッティングシートの施工に合わせて、
暑い中ご尽力いただいた木本さんに感謝です。
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メインの壁に貼る和紙は、土壁のようにしたくて、稲藁を漉き込んだものを壁紙用にオリジナルで制作。
継ぎ目はちぎった紙を、ランダムに貼り重ねることで気にならなくなり
狙い通り(それ以上)の土壁が現れました。試作を何度も行い藁紙を仕上げてくれた前田さん、助手の千陽さんに感謝。
蛍光灯の目隠しとして、和紙と竹を使って雲を見立てたランプシェード制作。
「ミエルかみ」という展覧会に出展した作品を展開したものです。
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什器制作は、店長村上さんによるものです。以前お蕎麦屋さんをされていたり、陶芸家の一面を持つ
多彩で丁寧な仕事に、たくさん救われました。
2018年7月22日に、無事木場に新しく生まれた赤ちゃん(ブランド)をお披露目することができました。
商品開発や店舗開店は、作るまでに大きな山があります。
頂上に立ちその見晴らしの良さに、みんなで喜びを分かち合います。これは得難い経験です。
ただ、これからが本番で、もっと大きく長い道のりの山が続いています。
谷もたくさんあると思いますが、乗り越え赤ん坊を立派に育て、
お米の価値を最大化する加工直売所となり、ご縁を結んでいただけたらと心から願います。
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最新情報を知りたい方は、木場のむすびfacebookページへ
「木場のむすび」ーコンセプト編ーも、ご覧ください。
蒜山から、美味しい美味しい夏の便りが届いた。
透明感があり、蒜山の大地の旨みと甘みがギュッと詰まったトウモロコシに、
麦茶とは全く別物で、麦の香ばしい香りが楽しめる、その名の通り「麦湯」を、少し遅めの朝食にいただく。
体の中に染み渡る仕合わせ。力がみなぎってきた。
蒜山耕藝の麦湯のパケージデザインは、全てロゴマーク同様に、素描のような手書き書体をメインビジュアルとしています。
それは、全商品パッケージに共通するルールです。
なぜ、素描か?
自然栽培という無農薬無肥料で育てられる農に対して、
できる限り無作為に、そして余計な装飾をつけず、デザインが調和するようにと考えたものです。
蒜山耕藝 hiru zen kou gei
食べたいものを作るーしぜんと、食卓から生まれる風景
長崎県東そのぎ町の木場(こば)という地に、新たな加工直売所が生まれました。
木場は、大村湾を一望でき美しい棚田風景が広がる郷です。
東そのぎは緑茶の生産地として有名ですが、豊富な湧き水に恵まれたお米は美味しく際立っています。
このプロジェクトは、プロデューサーの佐藤さんにお声がけいただき、開店に向けての外部サポーターとして、
コンセプトメイキングから、ネーミング・ロゴ・サイン計画に、
開店のための告知ツール・パッケージデザイン、そして空間づくりまでの、
クリエイティブディレクションとデザインを担当させていただきました。
佐藤さんが、この相談を受けられたのは、既に直売所建設が終わってから。
運営をされる、東そのぎ木場みのりの会の皆さんへヒヤリングを重ね、内容の整理、加工直売所オープンに向けてのプランニングと、
専門家のキャスティングをされてから、アオバトは関わることに。
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プロジェクトを始めるにあたり、まずは木場みのりの会の皆さんへ、デザイン講座を開き、
加工直売所を運営について、様々な質問を投げかけ、地元の声を拾い集めていきました。
ヒアリングを元にコンセプトワークを。加工直売所の機能として、第一にお米の価値を最大化する場所であること。
第二に、この場所が、地域や家族とのご縁を結んでいく場になることが見えてきて
以下のようなコンセプトイメージを描き、米どころ「木場のむすび」という店舗名をご提案しました。
コンセプトを総合的に具現化していくにあたって、皆さんと共有した完成予想図の分かりやすい合言葉は「峠の茶屋」でした。
(ちょうど加工直売所も広域農道沿いにあり、東そのぎ〜大村間を車が行き交うロケーションであります)
シンボルとなるマークはやはり米俵。結び目に米という文字を忍ばせて篆刻し、米・結び・地域の集合体を表しました。
この俵印に合う文字は筆を選び、木場のお母さんがおむすびを結んでいる風景を想像して揮毫。
田舎風に決してならないように、半歩先の姿を。
「木場百万石」なんて言ってみたりしたくなる目印に。
将来それくらい米作りが盛んになってほしいという、大きな夢を描いて。
オープンの告知用フライヤー。
ビジュアルイメージには、ちまきとおむすびを握るイラストで。
このちまきの竹皮は、地元で作られていることに感激。
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名刺のデザインとショップカードのデザインも。
たくさんのご縁が結ばれますように。
Facebookのヘッダーデザイン。
最新情報を知りたい方は、木場のむすびfacebookページへ
「木場のむすび」ーお店づくり編ーも、ご覧ください。
生産者の方のお米や農作物の価格が安過ぎる。
これは買い手にとっては、非常にありがたいことですが、作り手にとって果たしてどうでしょうか。
よくデザイン講座では、「価格を後継者が継げる、または人が雇える価格設定を」と伝えています。
そうしないと、持続可能な農業はできません。
しかし、現実は「地元では高いと売れない」ということで、そのままの価格で売られていることがほとんど。
(ここでの作り手の方は、小規模農家さんや兼業農家さんことで、大規模経営をされている農家さんではありません。)
朝の散歩の途中、田んぼには除草ができていないところや、
先の大雨の爪痕が残ったままの畔が目立ちます。
また、「農業はお金のかかる道楽」とか、「負の遺産を子供に残したくない」とか
農業を継続していく上での厳しい本音を耳にします。
実際に、今の美しい農村風景を守ってくれている世代は、60代を超えたお父さんお母さんがほとんど。
追い討ちをかけるように、種子法の廃止やTPP参加によって、10年後の農村風景がどうなるのかと。
なかなか楽観視できない状況です。
かと言って、解決策で自分が農業を担うという簡単なことではないので、考える石になってしまう訳です。
(田舎暮らしで仕事をしながら農業を!と、夢見て失敗した身ですから。)
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ただ、ネガティブな声を多く聞く中にも、
まわりには、農業に向き合いより良くしていこうと、創意工夫される人達の存在があります。
過酷な状況になっていけば行くほど、輝きを放つだろうと思います。
自分ができることは、その輝きをアオバトの仕事として伝え繋げることと、
ご飯を食べることを思う存分楽しむことくらいです。
タイトルで『お米2.0』とか言ってるから、画期的な発想を期待されていたら、ホントごめんなさい。
ただただ、美味しいご飯を子どもや願わくば将来の孫と、食べていたいだけ。
美味しいご飯に貪欲になれば、生産者へ思いを向けるようになるし、料理にも力が入ります。
盛り付ける器でも美味しさは変わり、食卓は華やぎます。
小石の波紋くらいの日常の幸せが、どんな未来の農村風景になるのか。
そんなことを考えながら田舎道を散歩してます。
食卓が変われば、風景も変わる。